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【夜、灯す】クリアした感想・評価(ネタバレ注意)~ストーリーの構成美が光る良作

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2020年7月30日に発売されたPS4Nintendo Switchソフト『夜、灯す』をクリアした感想・評価になります。やや長文です。ストーリーの核心をつくようなネタバレは避けていますが、ちょいちょいネタバレしていますのでその点は注意です。

 

 

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今作は、ひと夏の物語です

 

夜、灯す とは

貴方が、私の全てだった

由緒ある女子校を舞台に、怪奇事件に巻き込まれた女の子5人を描いたホラーアドベンチャー。次第に深まる女の子同士の絆。彼女たちの心の繋がりは、事件の真相へ向かう勇気となっていく……。
キャラクターデザインのカオミン氏による美麗なイラストで彩ります。 

価格:パッケージ版/ダウンロード版 6,980円(税抜)

プロデューサー:菅沼 元

ディレクター:山本 義紀

キャラクターデザイン:カオミン

ジャンル:ホラー百合アドベンチャー

CERO:C

タイトルの『夜、灯す』は、漫画『繭、纏う/原百合子』のオマージュだそうです。本作とコラボするなど、世界観が似ている部分もあります。『繭、纏う』を読んで興味惹かれた点も本作購入のきっかけの一つ。

 

 

感想・評価

構成美を感じるストーリー

かつてお嬢様学校と呼ばれていた歴史ある学校、神楽原女学園。この学校の筝曲部に所属する十六夜は夏休み明けのコンクールに向け、間と共に練習に勤しんでいた。

夏休みに入って間もないころ、箏曲の家元の娘、皇 有華が突然転校してくる。珍しいタイミングでやってきた転校生。鈴の夢に出てきた有華そっくりな「お姉さま」。そして、時を同じくして起きた奇妙な転落事件。

神楽原女学園に隠された闇が動き出す…。

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画像右から二番目が、主人公の十六夜 鈴↑↑。転校してきた有華↓↓を見て、夢で見る「お姉さま」そっくりであることに衝撃を受けます。

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筝曲の家元の娘ということもあり、自身も休み明けのコンクールに参加するという有華。しかし有華は、鈴たちの演奏を聞くなり「音楽への侮辱だ」と足並みを揃える気も見せない。

有華も有華で、色々と問題を抱えて転校してきており、部員に対してツンケンします。そして、部長が血だらけになる事件発生。 

入部早々に孤立する有華に、部長と共に頭を悩ます鈴だが、ある時部長の下駄箱に『旧校舎で話がしたい 皇』とのメモが入っていた。
「話し合いをするチャンス!」と意気込む部長を鈴は見送るが、しばらくして見つかったのは、旧校舎の2階から転落した、血まみれの部長だった。

  • 由緒ある学校にまつわる闇・伝説
  • 鈴が夢で見る「お姉さま」と、転校生の有華がなぜそっくりなのか
  • 部長が血だらけになった理由
  • 箏(こと)を通して、浮き彫りになった部員各々の問題

これらの要素が全てが並行して進んでいきます。

 

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箏のレベルが一人だけ別次元の有華は、他の部員が抱える精神的な問題を的確に指摘します。これが各々のキャラを掘り下げる伏線になります。

  • 「自分を偽る音」→麗子
  • 「やる気のない音」→真弥
  • 「ただ走るだけの音」→累

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左から、真弥・累・鈴・麗子

  

例えば、「やる気のない音」を奏でていた真弥。

有華の演奏技術に唯一合わせることが出来た主人公の鈴。そんな人物に出会ってこなかった有華は、鈴に対して特別な感情を抱くことに。後に、箏を通して二人だけの理解を深めていく……みたいな展開です。

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こいつ、戦いの中で成長してやがる……みたいな。鈴をきっかけに、みんなが有華と仲良くなるきっかけを得ますが、、、

その流れで部の雰囲気も良くなっていくのですが、唯一、鈴を奪われると感じて妬む・僻むのが真弥。 

 

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二人きりになった有華は、真弥に「やる気のない音」について指摘します。

その根本的な原因は、真弥は箏が好きなのではなく、鈴の傍にいたいという一点だけで箏を奏でていたこと。だから、自分がない空虚な音なのだと。

自分の中の最低な部分を見抜かれた上、自分から鈴を奪う有華に対して真弥は……みたいな展開に。この辺りの心理描写は見事だと感じました。

結局、鈴の隣で演奏する権利を賭けて対決するのですが、真弥は惨敗。みじめになって屋上へ逃げ込むも、部長と同じような状況に巻き込まれ、屋上から飛び降りそうに……(選択肢分岐次第でゲームオーバーになる)

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ですが、ギリギリのところで有華に救われます。そして真弥もまた、箏を通して己の弱さを認め、人として成長していくような展開に。他のキャラもまた然りです。

(ただ、真弥は百合をこじらせたキャラというか笑、トリップして周囲がついていけない領域に)

 

最後の章では、絆を深めた仲間が演奏することで全てが解決するような展開に収束します。

 

背景をしっかり描くことで、キャラが生きる

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「やる気のない音」を奏でる真弥を例に取り上げましたが、登場人物全員が過去を掘り下げるような展開になっています。

真弥に指摘した有華もまた問題を抱えており、、、。各々に背景がしっかりと描かれているので、尖った発言にも説得力があります。

そして、部員各々が抱える問題を仲間の存在によって解決していく……(有華の問題を鈴が解決するように)。その連鎖によって、謎が解けていくような流れです。なので、構成面で美しくまとまったストーリーであると言えます。

 

同様に、「自分を偽る音」「ただ走るだけの音」

これらのエピソードも、大きな挫折を経験している方だったり、努力の成果が自身に全く反映されない経験だったり。個々の掘り下げに関しては、共感ポイントが多かったですね。

 

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鈴のおばあちゃんも良いこと言ってますが、もちろん過去を描いています。その真意もプレイすればより伝わるようになっています

 

要は、しっかりとキャラの背景を描いているってことですね。

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なので、キャラの区別もわかりやすいです。初見は誰が誰で名前もわからないと思いますが、過去と精神面を濃く描くので、しっかりと認識できるでしょう。

安易に外見で(特におっぱいの大きさ)キャラを分けなかった点は、個人的に評価したい部分です。

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でも、水着は見たかった……(本音)

 

人生に音楽が絡む人間の会話も魅力的 

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箏という楽器を通じた音楽的な会話があり、音楽そのものを人生から切り離せない人間の思考と言いましょうか……そういった会話の部分で面白さを感じました。僕はピアノを習っていたので、画像のような会話は大好きです。

音楽の経験がなくても、『四月は君の嘘』とか『のだめカンタービレ』とか『BECK』とか、音楽を題材にした作品を事前に読んでいると理解が捗るかもしれません。もちろん、『繭、纏う』も。

 

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『水の変態』という楽曲がストーリー上で重要な役割を果たしているのですが、検索すると実際に存在していました。箏曲では有名なようです。専門知識がないのでアレですが、箏に詳しい方にとっては特別な感情を抱くのではないでしょうか。

また、クリア後に開放されるエクストラでは、サントラを楽しめます。

音楽面でも造詣が深いゲームだと言えるかもしれません。

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引用:教科書読本に載っていた『水の変態』の和歌。この和歌に着想を得て箏曲『水の変態』は作られた。|本の万華鏡 第24回 ことのこと―箏と箏曲―|国立国会図書館

 

百合&ホラー要素は

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百合に詳しいわけではありませんが、精神的な関わりを重視する点はしっかりと描かれています。中でも、結局誰が誰の一番なのか? という点を最重要視していることは伝わります。

一方で、絆が深すぎて生まれる問題も。二人の世界に他者が介入すると、強烈な嫉妬があったり。友人グループがあっても、結局誰が誰の一番なのか、みたいなところは必ずあると思います。

他にも、「〜だった私を変えたのはあなたでしょ? なのに、なんであなたがそんなこと言うの!」みたいな展開も、ある種の王道展開のような気がしますね。喜怒哀楽すべての感情は、その人からしか得られないというか。

僕は最も仲の良かった親友を失っているので、この辺りの感情は理解できました。あと、性的な描写はなかったです。

 

ホラー要素に関しては、怖い描写(と言うよりビックリする)が2、3回ほどあったくらい。ホラー要素はあるものの、恐怖を植え付けたりトラウマになったりするような描写はありません。

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ノベルゲームとして

AUTO機能もあり、フルボイスでもあり、特に気になる点はなかったです。パパっと文章を贈りたいときはボタンを押せばOKですし、もう一度見たい時はログを見ればOK。

次が気になって気になって仕方がない! という感じはなかったですが、終始一貫した関心を持ち続けてクリアまで至りました。

クリア後に、チャプターをやり直すことも出来ます。

 

声優一覧

十六夜 鈴(いざよい すず):長野佑紀

皇 有華(すめらぎ ゆうか):望月麻衣

青柳 真弥(あおやぎ まや):河野ひより

舞原 累(まいはら るい):都丸ちよ

田鎖 麗子(たくさり れいこ):大坪由佳

菅野 多恵(かんの たえ):衣川里佳

武沢 麻理乃(たけざわ まりの):千田葉月

小夜子(さよこ):東城日沙子

十六夜 妙蓮(いざよい みょうれん):篠永百合

 

小ネタ・気になった点(ネタバレ注意)

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陸上で将来有望視されながらも大怪我によって全てを無くしたと感じていた累。そんな累に、箏という新たな道を示した部長。累にとっては特別な存在です。にも関わらず、ゲーム内での扱いが良くない部長。

クリア後に、結局、部長はどうなったん!? って思う人もいるんじゃないでしょうか。最後まで出てこなかったので、書き下ろし小説(前日談、後日談)に書いてあるかもしれませんね。←日本一ソフトウェアのサイトの購入特典

 

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個人的な話でアレですが、オリエンタルランドで働きたい人を面接会場へ案内するようなバイトを学生時代にしてました笑。実際に接してきたので断言できるのですが、部長の発言↑↑は一理あります。面接に来る人は、ディズニーを愛する善人しかいませんでした(自分より腹黒い人をそのバイトで見たことがない)。

 

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小夜子さん(事件の犯人)は、有華からみて大叔母にあたります。日記の口調も当時の語り口。しかし、鈴たちの前に登場する小夜子さんは、日記とはまるで異なる喋り口調。この辺の説明があったような気もするのですが、、、見落としているだけかも?(まあ、プレーヤーのためなのでしゃーないですが) 

 

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当時の小夜子さんと灯音さんを知る、貴重な証言者のおばあちゃん。当時の様子をペラペラ話してくれるのですが、その理由は贖罪というか罪悪感を抱えていたという……まあ、もっともらしい理由でした。

が、その割に可愛らしい顔しとるやんけ! と内心ツッコミ(罪悪感を抱えて生きてきた人間の表情には思えない)

 

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パッケージ版についてきたアンケート。開封してもディスクや初回限定コードくらいしか入ってないことが多いので、個人的には好印象でした。

 

プレイ時間・クリア後

クリアに要した時間は、10時間ほどでしょうか。ボリューム不足は否めませんね。また、クリア後はエクストラが開放されます。エクストラの内容↓↓

  • CG鑑賞→カオミンさんが描きあげたイラスト。開放率が表示されます。98%の場合、最後の選択で→小夜子の願いを受けて、説得を試みる→スタッフロール後のイベントを見れば100%になるでしょう!トロフィー「ひと夏の出来事」「私の宝物」「夜、灯す」を獲得できました
  • 幕鑑賞→チャプターごとにやり直せます
  • 音楽鑑賞→サントラ

個人的には、「月と灯~忘れぬ想い~」が一番好きでした。

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普段は全くトロフィー集めをしませんが、あっさりとコンプリート。100作近くクリアしてきて初めてかもしれません。

 

選択肢の攻略(ネタバレ超注意!)

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このゲームは、どの場面でもセーブできます。なので、選択肢が出てきたらセーブして両方の選択肢を試しましょう。イラストをすべて見るためにも、あえてゲームオーバーになることがおすすめ。

  1. 序盤:ついていくがゲームオーバー・待つが正解
  2. 無気力の音:屋上が正解・校外がゲームオーバー
  3. 走る者:有華と一緒に行くが正解・残していく→ゲームオーバー
  4. 偽りの音:急いで麗子を止めるゲームオーバー・叫んで助けを呼ぶが正解
  5. 終幕 伝えたい想い:もう一度演奏を試みる→もう一つのエンディング
    小夜子の願いを受けて、説得を試みる→真END・たぶん正規ルート
    一旦撤退して、作戦を立て直す→ゲームオーバー

 

まとめ

ややボリューム不足を感じますが、非常に構成の美しいストーリーに触れて満足感がありました。最終的にはすっきりしますし、後味はとても良かったです。共感する部分が個人的に多かった点も◎。カオミンさんの描くイラストには世界観があり、プレイ中は没入感も保たれます。なので、音楽で研鑽を積むような経験があり、イラストに魅力を感じる方にはおすすめ出来ます。公式サイトの説明も充実してますしね。

ただ、価格の高さはネックですね……。相対的な話ですが、ゴーストオブツシマと近い価格なので、、、(比較するのはアレかもですが)

この価格なら、後日談を特典ではなくフツーにつけるべきでしょう。まあ、これは個人の意見ですが。

あとは、箏の習い事に行きたいなとか、ピアノをもう一度弾けるようになりたいなとか思ったので、自身の音楽や楽器に携わってきた経験・感性などが刺激されるような作品かもしれませんね。

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良い終わり方でした! 

 

 

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