僕の人生、変な人ばっかり!

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【松屋の思い出】ビビン丼を混ぜる姿勢で東京の広さを教えてくれた女性の話

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【2018年1月25日追記

2007年と2018年に食べたビビン丼の思い出を綴っています。

 

 

2007年

上京して山手線に初めて乗った時、「財布は絶対に死守する!」と気合を入れたことを覚えている。と言うのも、必ず財布をスられると思っていたから。田舎者の思い込みだ。でも、すぐに悟った。(あれ? みんな注意深くない)

気を張る瞬間と言えば、席が空いた時の先手の取り合い、乗降時のポジション取り、もしくは近づかない方が良さそうな人がいた場合くらい。

そもそも、電車でタバコを吸ってるガキがいない。コンビニでたむろする人間さえいない。気が付けば、僕は東京に来てヤンキーを探していた。そこで初めて、自分の住んでいた地域を客観的に見ることが出来たのだ。……もしかしたら、僕の心象風景にはヤンキーが常にいたのかもしれない。

 

東京の生活に慣れた僕は、友人のようへいと吉祥寺のカラオケでオール→朝5時に出て、そのまま松屋:吉祥寺サンロード店へ行く定番パターンを築いた。そこで必ず頼んでいたのがビビン丼と豚汁だ。

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ビビン丼(公式HPより)

ビビン丼の具材は豚肉、キムチ、きんぴらをコチュジャンで炒めたもの(たぶん)。温玉や青ネギと相まって、ごはんがすすむのだ。

ようへいは一気に混ぜてガツガツ食べる。いわゆる、男らしい食べ方だ。でも、僕は一口一口を味わいたい。なので、温玉崩しには慎重な姿勢を貫いており、味を変えるタイミングに大きな意味を見出していた。そして、どこかそんな自分に自信があった。

ビビン丼を食している人を見る度、心の中で共感と同時に「どんなもんか見てやろう」という意地汚さがあった。メッセージ性を持たせるようなビビン丼を食べる選手権があれば、武蔵野市の予選Aブロックは突破できるだろう、などと考えていたのだ。

でも、その自信はすぐに崩れた。

 

いつだったか、カウンターの対面に座った女性がいた。その女性はスプーンを持つと、手首をくるっと回転させ、温玉を広げた。僕は、その一瞬に衝撃を受けた。

スプーンを温玉に入れた瞬間、白身と黄身のかたまり具合を把握したのだろう。力の調整を無意識に行いつつ、柔らかな手首のしなりで回転姿勢へ移行。美しい弧を描くスプーン、その残像は虹のように映った。一言で言えば、ビビン丼に魔法がかかった瞬間を目撃したのだ。僕の頭の中は以下の言葉で支配された。

『百花繚乱』

愛おしそうな表情をしていた。けれど、決して目立たずに。しかし、誰よりも力強く。その女性が持つ奥ゆかしさと同時に、ビビン丼への深い愛も感じた。まさに、一つの芸術だった。

……僕が食べたビビン丼と、その女性の魔法がかかったビビン丼。どちらが美味しそうなのかは明白だった。そう、半熟卵を崩すタイミングなど、そんなことはあくまで低レベルな話なのだ。

井の中の蛙であると同時に、経験不足を痛感した。

 

あれから何度も挑戦したものの、あの境地には辿りつけたことは一度たりともない。あれを手に入れることは、僕の人生ではおそらく出来ない。何年も鍛錬された先にしか得ることの出来ないような、人生がその一瞬で表現されるような類のものなのだ。そう思うことにした。そう思わざるを得なかった。

 

僕は松屋を通して、東京の大きさ・人の秘めた一面が如何に素晴らしいかを知った。きっと本人は自身の持つ魅力に気付いてないだろう。

そして、松屋を見るたびに、あのスプーン使いの女性を思い出す。

 

2018年

ビビン丼が期間限定で復活した。

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2018年1月9日(火)10時から1月23日(火)10時まで、「ビビン丼」を期間限定販売いたします!
人気メニューとして大変多くのお客様からご好評を頂いていた「ビビン丼」が、今回新春キャンペーンにて生まれ変わって新登場。
販売期間は2018年1月9日(火)10時から1月23日(火)10時までの2週間限定(※1)です。
新しく小松菜ナムル、根菜きんぴらも加わり、シャキシャキとした野菜の歯ごたえと牛肉の相性は抜群。
ピリッと辛いキムチ、甘辛い特製タレと混ぜながらお楽しみください。
さらに、豚汁がセットになったお得なメニューもご用意いたしております。
新春キャンペーンのこの期間に新しくなった「ビビン丼」を是非お召し上がりください。

しかしである。1月13日に一度足を運んでみたのだが、なんと14時の時点で満員……。やむなく撤退してから時は経ち……1月25日。このような記事を書きながらも完全に食べ忘れていた己の浅はかさを嘆きつつも、一縷の望みをかけて最寄りの松屋に電話した。

「ビビン丼ってまだやってますか?」

すると

「もう終わっちゃったんですよねえ。23日までです」

と言われてしまった。そうだよねえ~……そりゃそうだ。と思うも、この程度で僕は諦めない。調理手順と材料を考えれば、数日の延長があってもおかしくないと考えたからだ。

そして、とうとう見つけた。

「昼までなら何とかご用意できると思います」

と言ってくれた店員さん。その言葉に興奮した僕は

「と、取り置きか予約はできますかっ?」

と食い気味に尋ねるも、「そのようなことはやっておりません」と丁重に断られる始末。

電話を終えた時点で11時。外は雪が吹き荒んでいたが、急いで準備をしてバスで向かったのだった。松屋に到着するも何一つ変わった様子はなく。息切れして乗り込んできた自分の存在が浮いているようで恥ずかしくなった。

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丼や具材は当時とは異なるものの、あの甘辛い味付けはあの時の感情を呼び起こすには十分なものだった。そして、あのスプーン使いの女性のように、僕はおそるおそる手首を回転させて試みた。

その結果がこちら

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結局、僕は10年前と大して変わっていないのかもしれない。それでも、この日を忘れないだろうな。雪の日・期限過ぎ・電話しまくって見つけた一つの店舗・ダッシュで駆け込んで場違いだった自分・最後のビビン丼。どれも思い出に華を添えるには充分な出来事であると思う。

本当にありがとうございました。

 

ビビン丼|メニュー|松屋フーズ

 公式HP↑↑404Not Found

 

www.momotoyuin.com

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