
『ファイナルファンタジーIXえほん ビビとおじいちゃんと旅立ちの日に』を読みました。めちゃくちゃいい絵本でした。
本書だけでなく、FF9本編のネタバレを含みます。未プレイの方は注意です。
ビビとおじいちゃんと旅立ちの日に とは
『ファイナルファンタジーIX』のおはなしのちょっと前、
“ビビとおじいちゃんのはじまりのものがたり”
発売から25周年を迎えた『ファイナルファンタジーIX』のオリジナルえほんです。
食の道「食即是空」を究めようとするクワンおじいちゃんの前に現われた“ビビ”。
空から落ちてきた少年と、ひとり暮らす老師との、ふたりのふしぎな生活。
やがて訪れる“ビビ”の旅立ちまで、緩やかな日々を描く前日譚。
『ビビとおじいちゃんと旅立ちの日に』は、2025年7月2日に発売されたFF9の25周年記念絵本です。
作はFF9でイベントデザインを担当した青木和彦さん。絵はFF9のキャラクターデザインを担当した板鼻利幸さん。
クワンおじいちゃんの前に空からビビが落ちてきて、二人で暮らし、最後はビビがアレクサンドリアへ旅立ちます。
Twitterで見かけた時に、即買い→即レビューを書いちゃいました。
ビビの名前はどこから来たのか。
どうやって黒魔法を覚えたのか。
なぜアレクサンドリアへ行ったのか。
ゲーム開始時に持っていた偽チケットはどこから来たのか。
FF9を遊んだ人なら気になる話が結構入っています。
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絵本なのに、FF9を遊んだ大人の方がつらい
読みながら少し不思議な気分になりました。
文章はやさしく、字も大きくて読みやすい。絵本なので当然なのですが、どう見ても子どもでも読めるように作られています。
でも、この話を読んで一番いろいろ思い出すのは、子どもではないでしょう。2000年当時にFF9を遊び、ビビがどのように生きたのかを知っている大人です。
僕は、FFシリーズでは9が一番好きです。数年前に書いたPS4神ゲーランキングでも5位にしていましたし、PS4のRPGランキングでも「FFで最も好きな作品は9」と書いていました。
理由もずっと同じ。
「なぜ生きるのか」がテーマになっているからです。
そんなゲームを遊んでから25年。……25年!?!?!?!?
まさか、ビビが旅に出る前の話を絵本で読むことになるとは思いませんでした。本当は発売日に買いたかったですが。。。
表紙が「Melodies Of Life」を想起させる
FF9は元々、頭身の低いキャラクターとファンタジーなので、絵本との相性が良いですよね。特にビビは、そのまま絵本の中に入っても全然違和感がありません。
クワンおじいちゃんと暮らして、失敗して、魔法を覚えて、外の世界を少しずつ知っていく。
ゲームを知らなくても、小さな男の子が成長して旅立つ話として読めます。

ビビは自分が何者なのかを知り、自分と同じ黒魔道士たちが「止まる」ことを知ります。それでも残された時間を生きますよね。
その結末を辿るビビが、まだ何も知らずにクワンおじいちゃんと暮らしている。これから何が起きるか知っている大人が、何も知らない小さなビビを見る絵本。それが本作です。
そこが良かった。
ビビという名前を付けたのはクワンだった
絵本で興味深かったのが、ビビの名前ですね。ビビという名前は、クワンおじいちゃんが付けています。
そして青木和彦さんが後のインタビューで、かなり詳しく由来を説明していました。
最初は「黒魔道士6型の6号だからVIVI」という案も考えたそうです。しかし最終的に使われたのはビビの身長でした。
VIVIを逆さまにするとIVIV。IVIVを4フィート4インチ、VIVIを6フィート6インチと見立てて、
「いまはIVIVだけど、いつかVIVIくらい大きくなってほしい」
というクワンの願いから名付けられています。
ネタバレを知っていれば、大きくなってほしいと願って付けられた名前なのに、その未来が普通の人間と同じようには続かない。
でも、FF9の最後まで見ると、ビビが生きた証はちゃんと残っています。それが絵本を通じて、さらに入ってくる。昔FF9を遊んだ時より、大人になった今の方が、涙腺にくるものがありましたね。。。
偽チケットまでクワンおじいちゃんだった
ゲーム冒頭、ビビはアレクサンドリアで芝居『君の小鳥になりたい』を見ようとします。ところが持っていたのは偽チケット。
開始早々かわいそうなビビですが、絵本を読むと、このチケットを用意したのもクワンおじいちゃんだったことが分かります。
クワンはビビのためにチケットを買います。しかしそれも偽物。……これは面白くて笑いました。
25年前から持っていた偽チケットに、今になってそんな話を足すのか。
しかも青木和彦さんによると、昔の攻略本では「トレノで手に入れた」という設定だったそうです。そこを今回、「旅立つビビのためにおじいちゃんが用意する方がいい」と変更しています。
せっかく孫みたいなビビのために買ったのに偽物。クワンらしいし、FF9の始まり方にも合っています。良い話やなあ、とほっこりもしましたね。
クワンおじいちゃんが思っていたより普通のおじいちゃん
ゲームだけだと、クワンは変人のイメージがありました。
ク族で食の道を究めていますし、そもそもビビを拾った理由も最初は食べるためだったような。
ただ、FF9本編の時点では亡くなっているので、ビビとの生活はほとんど見えません。
絵本では、そのクワンが普通に子育てしています。
ビビがうまくできない。
クワンも困る。
二人で生活する。
トレノへ出かける。
そして最後は外へ送り出す。
青木さんは、この二人を「人と関わるのが苦手な二人」として描いたと話しています。
ゲームの時点では細かく決められていなかった二人の生活を、25年後になって作ったそうです。
大きな冒険ではありません。世界も救いません。ただ一緒に暮らしています。それが良い。そういった日常の愛おしさを好きな人にはおすすめしたいです。
25年前より、今読んだ方がビビが好きかもしれない
「FFで最も好きなキャラは4のカインですが、最も好きな作品は9です」
と、僕は書いていました(しょうきにもどっています)。
ただ、FF9そのものは昔より今の方が好きかもしれません。思い出補正でしかないですが、リメイクも期待してますしね。
子どもの頃は冒険として見ていたものが、大人になると別のところに引っかかるからです。
いつまで生きられるのか。
誰かに覚えていてもらえるのか。
自分がいなくなった後に何が残るのか。
大切な人の出会いと別れ、特に死ですね。それを経験して、昔よりは大人になっている。だから、センチメンタルなのかもしれません。
本書の内容は、
- ビビが名前をもらった。
- クワンと一緒に暮らした。
- 魔法を覚えた。
- チケットをもらった。
- 旅に出た。
それだけ。でも、ビビの最後を知っていると、その「それだけ」が良い。
FF9をクリアした人に読んでほしい
FF9を知らなくても読めます。でも、ゲームが先にあるべきです。そして、FF9をクリアしたら、本書を読んでほしい。
ビビの名前を誰が付けたのか。
アレクサンドリアへどうして向かったのか。
あの偽チケットを誰が渡したのか。
クワンおじいちゃんとどんな時間を過ごしたのか。
全部知った状態で、またアレクサンドリアの小さな黒魔道士を見る。FF9が好きだった人には、それだけで読む価値があります。
ジタンやエーコは出てきませんし、少し物足りない気もしますが、44ページは絵本では一般的と言えるでしょう。
ゲームなら一瞬で通り過ぎるくらいの長さですが、1ページを噛みしめるように、読んでみてほしいですね。
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