「薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた」第十八話。国家試験五日前に、彼女が発熱してしまった話。
この記事のつづき
2015年2月23日
国家試験五日前、彼女が発熱した。
「病は気から」という言葉があるが、今回のケースはまるで当てはまらない。ここまで気を張ってきたから緩んだ~とか、体調管理をどこか怠ったんじゃないか~とか、そういう類の理由はあり得ない。それは身近に見てきた僕が証明する。
入学以降、予備校を初めて欠席した。
前々から思っていたのだが、体調管理ってなんだろう。具体的に記述すると、
- 外から帰ったら手洗いうがい(鼻うがい)
- 栄養のあるものを食べる
- 湯船に浸かる
- リラックスする
- 歯と舌を磨く
- 睡眠時間を確保するために早く寝る
- 良好な精神状態を保つ
思い当たるのはこの程度だろうか。ただ、物事に絶対はないように、体調管理を継続したからといって、体調を崩さないとは限らないのは誰もが知っている。
――高校生の時、僕は軽いうつ状態だったことがある。体調を崩すと、口酸っぱく担任の暴力教師に説教されていたことを思い出す。彼がよく口にしていた言葉が、「病は気から」「体調管理をしろ」だった。
本質的に解決をしようがないから体調を崩して悪循環に陥っているのに、その思慮の浅さからに呆れ返っていたが、それを十年後しに思い出してしまった。
予備校は、名古屋で最も栄えている栄にある。日本でも有数の都市だ。また、名古屋市営地下鉄東山線も、名古屋市で最も利用客が多い路線になる。
常日頃からマスクを着用している人だって風邪を引く。家から全く出ていない人間でさえ、風邪を引く。無菌状態の宇宙に行っても、人間の雑菌はなくならないから風邪を引くらしい。故に、風邪を引く可能性は人間である限りなくならない。
試験に関しても同じことが言える。頑張ったからといって、合格するわけでもない。いくら頑張ってもマークが一つずつズレていたらダメだし、会場に行く途中に何かあるかもしれない。
でも、そうやって資格保持者は試験をクリアしてきたのだ。
直前に体調を崩してしまった事実は変えられない。だったらどうするか。
本番まで引きずるよりも、一日で完璧に治す。そのために一緒に病院まで行き、薬をもらった。帰宅後は、とにかく寝ていた。
ちなみに、予備校に一度も欠席しなかった場合、学費の一部が返ってくる救済措置がある。考えたくはないものの、万が一の場合は保険の一つになることは間違いないだろう(現在は不明)。つまり、仮に落ちた場合、今回の欠席によってお金は返ってこなくなった。
とは言え、五日前の判断としては正しいと感じていたし、行動も勇敢だと思った。
2015年2月24日
結局、彼女は一日で体調を戻した。38度を超えていたにも関わらず。
この時、思うようにいかない人生を歩んできているからこその「強さ」みたいなものを、彼女から感じたことを覚えている。人はそれを執念と呼ぶ。
「病は気から」くることもあるだろう。しかし、「病を治すのは気から」なのかもしれない。彼女を見て、僕はこちらの言葉を使うことにした。
試験前に発熱したことで、本番に体調を崩すことはないだろう。この時期は、そのくらい小さなポジティブ要素でも、積極的に拾っていきたいものだ。
つづき
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