薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた~人生あるある発動

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「薬剤師国家試験に落ちた彼女を、僕は隣で見ていた」第六話。国家試験に落ちた彼女がバイトを始めて少しずつ物事が動いていく話など。

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大学時代にグルメ本を出版・書評コンクール入賞など、文筆に傾倒。就職できずに当時薬学生だった彼女のヒモになるが、一念発起して立ち上げたブログで生計を立てることに成功(その後、結婚!)。ゲームやマンガなどエンタメ分野のレビュー、感謝を綴ったエッセイが好評。ブログ歴8年目になり、当時の内容を綴ったノンフィクション小説の電子書籍化が決定。

二〇一四年五月

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バイトの薬剤師の先生と二人で、大型の介護老人施設に薬を持って行った話を彼女から聞いた。

クリニックの開業医が担当の施設に訪問

→毎週一回、処方箋を発行する

→施設と契約している薬局に、その処方箋が回ってくる

→処方箋を元に調剤して、薬剤師が施設へ持っていく

という流れだ。

患者さんの中には、病院に行ったり薬局に訪問することが難しい方もいる。施設に入院しているならば尚更だ(この施設は認知症などの人も多かったとのこと)。

薬剤師は薬局から外に出ないイメージがあったので、少し驚いたことを覚えている。

 

また、彼女と同じく、国試に落ちてバイトをすることになった子が入ってきた。名前はみっちゃん。違う大学だが、年齢も近く自然と話すようになったという。

みっちゃんは午前中だけのバイトで、午後は家の手伝いをするそうだ。なので、お昼ごはんも一緒にならない。話す時間は短いが、その会話の中で、

「予備校の半年コース行くんよ」

「ええ、そうなん! 一緒だね」

と言うような会話があり、同じ予備校に同じタイミングで通うことがわかったらしい。
予備校に入る前に、同じ境遇の友人と出会えた。これは絶対に心強いはずだ。

 

 

一年に何回か、彼女と小旅行へ行く。超インドア派の彼女に、旅好きな僕がプレゼンし、成功すれば行くことになる。とは言っても、付き合ってもう七年(執筆当時)になる。大学時代に東京で一人暮らしをしていた上、その時から名古屋を起点に全国に出向いていた。だから、愛知県内はもちろん、伊勢・志摩、関西なども充分に巡っている。

しかし、改めてもう一年だけ名古屋に住めるとなれば、行きたい場所があった。

 

立山黒部アルペンルート。

 

タイミングが合えば行きたい……長年そう思ってはいたものの、そもそもの開通期間が四月中旬から十一月末までと限られている上に、名古屋からの移動時間も含めると二泊以上が妥当。予算も高めで、学生には厳しい金額だった。

しかも、最も有名な巨大な雪壁:雪の大谷は時期的に見れない。それでも、黒部ダムや室堂平、称名滝といった見どころは尽きないのだ。

「予備校始まる前に時間あるやろ? ストレスの発散と勉強に集中するためにさ、アルペンルート行こう! たくさん見どころあるし、リフレッシュには最適やと思うよ」
「都合の良い言葉並べとるけど、結局自分が行きたいだけやろ」

「……そんなことないよ」

「へいへい。勝手にしておくれ。ただし、日程が合えばね」

少しずつ、少しずついい流れが傾いているような気がしていた。

 

 

薬局では優しい人々に囲まれ、たまにティータイムもあり、仕事の合間には勉強もできる。環境に馴染んできた上、新しい友だちとの出会いもあった。……しかし、そんな平和な日には必ず終わりがやってくるのが人生だ。

五月中旬頃、なんと彼女だけ職場が変わることになった。

「なぜか私だけ異動っていう……。せっかくみんなと仲良くなってきたんに」

しかも、その知らせを聞いた薬剤師の先生方のリアクションがアレだったらしく、

「あっちはねえ~……」

「あー……」

「……とにかく……うん」

と、歯切れの悪さがそれはもう凄かったとか。

「すごくいい雰囲気やったのに……」

と嘆く彼女に対し、

「まあ、次の職場でも誰かに可愛がられるって」

「そんなんわからんやん」

そう言われて、我ながらテキトーなことを言ったなあ……と思ったが、こういった時はテキトーを貫き通すことにしている。

「また仕事の幅が広がって将来に活きるよ」

「……」

「八月までやし、まあいいやん。悪いことばっかやないよ」

「フン!」

あんたはテキトーなこと言えるけ良いよね! という意図を感じつつ、ポジティブな言葉を絞り出した僕に対して少し感謝もしているような彼女の表情を察し、物事が良い方向へ向かうように祈ったのであった。

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